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この度、令和3年4月1日付けで、血管分子生理学講座(第一生理学講座)を主宰することになりました内藤尚道と申します。
本講座では血管研究を通じて生命現象と疾患病態の解明に取り組んでいます。

血管は全身を隈なく張り巡るネットワークを形成して、血液を循環し、血圧を維持することで、全身に酸素と栄養分を届けるとともに、二酸化炭素や老廃物を除去することで、体の恒常性を維持しています。組織への血流が途絶え低酸素状態になると、既存の血管から新たに血管ができる「血管新生」という現象が生じます。この血管新生は組織の修復や再生に必須の現象ですが、同時に癌の増大・進展・転移、虚血性疾患、網膜症、肺線維症、炎症性腸疾患、肝硬変、関節リウマチなど、多くの疾患の病態形成に関わっています。そのため現在、血管新生を制御する様々な薬剤が開発され、臨床応用もされています。
 また最近では、血管は血液や物質を全身に届け、物質交換を担う「管」としてだけでなく、炎症、アレルギー、線維化をはじめ、組織の再生や修復など、様々な生命現象に積極的に関与することが知られるようになり、「血管は血圧調整と物質交換を担う安定した管」という概念が変わってきています。

本講座では正常な血管を知ることで、疾患病態に関わる異常な血管を理解し、さらには血管新生や血管機能の制御を通じて血管を標的とした治療法を開発することで、疾患の制御と治療を目指しています。

教育面では医学類2年生の器官生理学を担当いたします。講義と実習を通じて基礎医学を理解することで、病態の本質を見抜き、理論に基づく診断と治療が実践できる医師・研究医・医学者の育成に貢献したいと考えております。

 

2021年4月1日
金沢大学医薬保健研究域医学系 血管分子生理学
内藤尚道

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研究室沿革

本講座の歴史は古く、本学で生理学の授業が始めて行われたのは1870(明治3)年、金沢医学館の時期です。1923(大正12)年には上野一晴先生が英国留学より帰国後、小立野の金沢医科大学の生理学担当教授として赴任され、翌1924年に生理学教室が竣工しました。国立学校設置法により金沢医科大学が金沢大学医学部なり、1949(昭和24)年に長崎医科大学教授の齋藤幸一郎先生が当教室の第2代主任教授に就任致しました。1954(昭和29)年には第二生理学教室の初代教授として岩間吉也博士が赴任され、本講座は第一生理学教室となりました。1974(昭和49)年には名古屋大学環境医学研究所から永坂鉄夫先生が第3代教授として就任致しました。そして1999(平成11)年には東京大学から第4代教授として多久和陽博士が就任されました。2020(令和2)年3月に多久和教授が定年退職された後、2021(令和3)年4月より内藤尚道が第5代教授として就任し、現在に至っています。